世のため、人のために立派な行いをしている高校生達を紹介します。
高校生達の活躍を、ぜひご覧ください。
フィリピンを訪問し子供たちと交流 国内外へ広がる読み聞かせ活動
福島県 あさか開成高校 読み聞かせボランティア部「オイガ」のみなさん
1996(平成8)年、福島県内で唯一「国際科学科」のみの単位制高校として創立した県立あさか開成高校。「英語」、中国語」、「ハングル」、「スペイン語」、「国際協力」などの専門科目での学習に加え、「オーストラリア研修」などを実施し、将来国際社会で活躍できる人材の育成を目指している。
生徒の中には、この日頃の語学教育、国際教育を生かして、地域貢献活動を展開している生徒も多く、そのひとつが読み聞かせボランティア部「オイガ」だ。
同部では、アジアの子どもたちに絵本を贈る活動もしており、昨年8月には、部員3名と顧問の教諭が贈り先の一つ、フィリピンを自費で訪問。地元の子供たちに絵本を届けるとともに、エプロンシアターを英語と日本語で披露するなどして交流を深めた。
生徒らのフィリピン訪問は、2007(平成19)年1月に続いて2度目。今回は、8月17日〜23日までの1週間、前回訪れたメトロマニラのフォートボニファシオ小学校(マカティ地区)、アウロア小学校(ケソン市)、ICAM(トンド地区)に加えて、フィリピン大使館から紹介された養護施設ナヨン・カバハーン(マンダルーヨン市)を初めて訪問。約600人の子供たちと交流を楽しんだ。
訪問先では、自分たちが英訳した「ねずみのよめいり」などの絵本をプレゼントし、さらに、エプロンシアター「ねずみのよめいり」を英語と日本語で演じた。また、生徒らは福島県いわき市在住の母子から託された絵本詩集「木とわたし」(田中佐知 著)の読み聞かせを英語で行った。感情豊かに語りかける生徒の言葉を、子供たちは身を乗り出すように聴き入り、読み終わるたびに大きな拍手を送っていた。
「オイガ」は、スペイン語で、“耳を傾けてね”という意味で、2001(平成13)年7月に誕生。この年に赴任してきた顧問の教諭が、前任校で取り組んでいた“高校生による読み聞かせ活動”を授業の中で紹介したところ、一人の生徒が「私も子供たちのために、絵本を読んであげたい」と、声をかけてきたのがきっかけだった。
部創設後は、地域の保育所や小学校の児童クラブなどを訪れ、大型絵本の読み聞かせや紙芝居、パネルシアターなどを上演。昨年末までに開催したお話会は、およそ160回を数える。このお話会では、地域のライアー(竪琴)奏者や「語り手たちの会」のメンバーの他、児童文学者をゲストに招いたり、郡山市立第一中学校の有志と合同で開催し、多くの子供たちに絵本の楽しさや感動を与えている。
一昨年12月には、「オイガ」による読み聞かせ講習会がきっかけとなり、福島県立須賀川養護学校高等部に「ミ・コラソン」(スペイン語で“私の大切な人”の意味)という読み聞かせグループが誕生するなど、読み聞かせ活動の輪は大きな広がりをみせている。
アジアの子供たちに絵本を贈る活動がスタートしたのは、03(平成15)年7月。顧問の教諭が国際科学科にふさわしい活動として、フィリピンの子供たちに自分たちで英訳した絵本を贈ろうと提案。部員たちは“学校での学びが生かせる”とすぐに賛同し、絵本の英訳化に取り組んだ。その後、絵本の贈り先は、ベトナム、ラオス、ネパール、韓国、中国まで拡大。現在、拓殖大学を通じて、同大学と提携しているインドネシアのダルマプルサダ大学(ジャカルタ市)の図書館に絵本を贈るための準備中という。
これまでに、アジアの子どもたちに贈った絵本は、515冊にもなる。これらの絵本の多くは、郡山郵便局に設置している絵本ポストに寄せられた郡山市民の善意によるもので、部員たちは「本当に感謝している」と話す。
そして、08年8月には「オイガ」の多彩な奉仕活動が高く評価され、読み聞かせボランティア大賞の大賞を受賞。さらに文部科学省のリーフレット「学校図書館のチカラを 子どもたちのチカラに」で全国に紹介された。加えて、岩波ジュニア新書の『部活魂!』には、部員が書いた「熱血教師と読み聞かせ。そして、フィリピン訪問」と題する文が掲載された他、外務省国際協力局企画・国際協力推進協会発行の「国際協力NEWS」10月号に、フィリピン訪問を中心に大きく取り上げられた。「オイガ」の部員は、こうした高い評価をパワーに、今後も地域はもちろん世界の子供たちのために、貢献していきたいと話している。
(2010年1月掲載)