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秋田県の北部中央に位置する北秋田市に、1909(明治42)年創立の県立鷹巣農林高校がある。「質実端正・自主自立・友愛明朗」を校訓とする同校は、2011年4月、県立鷹巣高校、県立米内沢高校、北秋田市立合川高校の3高校と統合し、県立秋田北鷹(あきたほくよう)高校として、新たな歴史の路を拓くことになる。 統合後の新校舎は同校敷地内に建築されるが、これに伴い、中庭のソメイヨシノの撤去が決まった。 同校のシンボルツリーでもあるこのソメイヨシノは、樹齢70年を越す老木で、高さ約15メートル、幹の太さは直径1メートルほどもあり、4月下旬から5月上旬にかけて見事な花を咲かせてきた。生徒がこのソメイヨシノが伐採されることを知ったのは、昨年春のことだった。 すぐに生徒から「何とか残してほしい」の声があがった。またOBからも「教室の窓から外を見ると、いつもこの木があった」と惜しむ声が広がり、こうした厚い想いが学校を動かした。そして、森林環境科の3年生(今年3月卒業)が、70年もの間、鷹巣農林高校の歩みと生徒を見守ってきたソメイヨシノを残すための挑戦を開始した。 森林環境科の2人の教諭の指導のもとで生徒は当初、移植を考えたが、サクラの木にとって最も怖い病気のひとつ「テングス病」に罹っており、移植は困難とされた。そこで、この遺伝子を持った木を育てようと種を植えたり、挿し木を行ったりしたが、生徒の期待に反して発根しなかった。 万策尽きたかと思われた時、生徒がテレビ番組で「取り木」という方法を知り、チームに提案した。「取り木」とは、枝の皮をはいで、そこに水苔を巻き付けて発根させる方法で、すぐにチャレンジすることを決めた。6月に25ヶ所の枝で試みたところ、10月に10ヶ所ほどの枝で発根しているのを確認。その枝を切り取り、培養土などを入れた10個の鉢に植え、繁殖させるべくビニールハウスで生徒が手厚く管理していた。 年が明け、3月に入った時、2つの鉢のサクラの枝から花が咲いているのを発見。同月中旬には20輪ほどの花をつけた。 指導にあたった教諭は、「生徒の気持ちが通じた」「2、3年後に50センチ程度まで育ったら、統合校の生徒が毎日見る場所に植樹したい」と語り、ソメイヨシノを後世に残すために、懸命に取り組んだ教え子たちの熱意に応えたいと話していた。 同校生徒の今回の試みは、創造性豊かで実践力に富み、目的意識を持って学習活動や諸活動に主体的に取り組む生徒の育成に、100年にわたって努めてきた鷹巣農林高校の教育の成果であり、それは同校で学んだ生徒によって、統合校の秋田北鷹高校でも継承されていくに違いない。
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| (2010年4月) |

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